学校薬剤師になった私が伝えたい10のこと ~日焼け止め~

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皆さんは日焼け止めを使っていますか?

私の子供の頃は、『小麦色の肌は健康な証拠』なんて言われていましたが、昔の常識は今の非常識になってしまいましたね。
最近では、紫外線に対する対策は、健康を守るために大切な知識とされるようになってきました。美容目的だけではなく、健康な生活を送るためにも大切なことなんですね。

今回は、日焼け止めを焦点に充てながら、お話していきたいと思います。

実際の商品などはご紹介できませんが、薬剤師の観点から抑えておきたい知識を詰め込みました。皆さんの日焼け止めの商品選びや、紫外線との付き合い方の参考になれば幸いです!

日焼けについての知識を身につけよう!

日焼けの原因は紫外線

日焼けの原因は言うまでもなく紫外線です。では、その紫外線にはUVA,UVB,UVCという3種類あることはご存じでしょうか?それぞれについて簡単に説明します。

UVA‥皮膚の奥まで届く紫外線です。シミやシワに大きく関わると言われます。皮膚への影響力が比較的弱いですが、雲や窓ガラスなどの障害物を通り抜けしやすい特徴があります。

UVB‥皮膚が真っ赤になる原因の紫外線です。いわゆる日焼けに大きく関わると言われます。皮膚への影響力が強いですが、雲や窓ガラスなどの障害物で遮られやすい特徴があります。

UVC‥皮膚への影響が最も強い紫外線ですが、オゾン層で吸収されるため、地表に到達することはありません。

環境省:紫外線環境保健マニュアル2015 p8 より抜粋

炎天下で日焼けして、皮膚が赤くなってヒリヒリするのは、UVBが原因となります。直射日光が当たれば日焼けするのは、当たり前に想像できますよね。でも実は、曇りの日や、屋内での活動であっても、UVAが存在するので、5~8月の紫外線が強い時期は注意が必要になるんです!

日焼けの種類を学ぶ

一言に日焼けと言っても、実は二つのタイプがあることをご存じでしょうか?
すぐに症状として現れるサンバーンと後から現れるサンタンがあります。

サンバーン‥紫外線に曝露したから数時間後に生じる赤い日焼けのこと。曝露してから8~24時間後にピークとなり、2~3日後に消失します。

サンタン‥紫外線の曝露から数日経過して生じる黒い日焼けのことで、数週間から数ヶ月後まで続きます。

日焼けだけではない、紫外線の悪影響

日焼けの原因は紫外線とお話ししましたが、紫外線が与える影響は日焼けだけではありません。強い紫外線の影響ですぐに引き起こされる急性傷害と、継続的な紫外線の影響で引き起こされる慢性障害の2種類に分けられます。(下の図を参照ください。)
単純に日焼け防止という目的以外にも、日焼け対策は重要になってくるわけですね。

環境省:紫外線環境保健マニュアル2015 p41 より抜粋

日焼け止めを選ぶときに欠かせない2つの数値

日焼け止めの強さを表すPAとSPF

皆さんは、PASPFという言葉をご存じですか?
日焼け止めを購入される方で、全く聞いたことが無いという方は流石にいらっしゃらないと思いますが、その意味をきちんと理解できている方は意外と少ないのではないでしょうか?

PA‥UVAの防御指数。強さは、+~++++までの4段階があります。

SPF‥UVBの防御指数。強さは数字で表され、表記上では50+が最高値になります。

PAについて詳しく知ろう

PAとは、「Protection grade of UVA」の略で、UVAが皮膚の内部に侵食するのをどれだけ防ぐかという指標として用いられます。

UVAはその性質上、日の当たる室内や曇りの日でも一定量曝露するため、曇りの日の活動でも、室内で活動している人も、PAはチェックしておく必要がありますね。

SPFについて詳しく知ろう

SPFとは、「Sun Protection Factor」の略で、UVBが与える影響をどれだけ防ぐかという指標として用いられます。

ザックリ説明しますと、SPFはUVBによって生じる赤みが現れるまでの時間を何倍延長するかを示したものです。SPF20であれば、通常よりも20倍の時間、UVBによる赤みを防ぐことができるということになります。10分で日焼けするような場合は、200分まで延長されるわけですね。

これだけ見ると、SPF20でも十分そうですが、実際に使用する場合は、汗をかいたりなどがあるので、定期的に重ね塗りが必要になってきます。また、日差しが強い場合は、通常時1分もせずに赤みが生じることもあります。どの強さを選ぶべきかのポイントは、「日焼け止めの選び方」の項目を参照ください。

ちなみに、SPF50+という表記はSPFが51以上であることを表していて、51かもしれないし、100かもしれません。流石に100ってことはないような気はしますが、、、、

SPFの表記が51以上の場合に50+と表記されるようになったのは、各会社がSPFの値を高めることを競い合い、SPFが高ければ高いほど売れるようになってしまい、本来の目的から逸れてしまったためと言われています。
SPFの件に限らず、私たち消費者は数字に騙されず、必要なものを選ぶための知識を身に着けておきたいですね。

日焼け止めの成分について調べる

日焼け止めの種類は大まかに分けて2種類

日焼け止めの成分は、主に紫外線吸収剤と紫外線散乱剤の2種類に分かれます。
それぞれの特徴について確認してみましょう。

紫外線吸収剤‥比較的効果が強く、塗布した際も白色化しにくい。光接触皮膚炎などの皮膚トラブルが起こりやすい。

紫外線散乱剤‥効果はやや劣るが、安全性は高い。塗布した際に白色化しやすい。金属アレルギーがあるかたは注意。

紫外線吸収剤の主な成分

メトキシケイヒ酸エチルヘキシル‥最も使用されているUVB吸収剤。日本のガイドラインでは記載はありませんが、個人的には妊婦や小児が積極的に使用するのは避けた方が良いと考えます。皮膚からの吸収率が高く、血液に吸収されることで内分泌かく乱作用が懸念されるという注意喚起もあります。

オキシベンゾン-3‥UVAとUVBの両方を吸収します。メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと同様に、皮膚からの吸収が指摘されています。こちらも公的な見解が出ているわけではありませんが、個人的には妊婦や小児が積極的に使用するのは避けた方が良いと考えます。また、紫外線吸収剤の中でも、接触アレルギーのリスクが高いとされているので、皮膚が弱い方は注意が必要です。

t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン‥UVA吸収剤。メトキシケイヒ酸エチルヘキシルと相性が良い。

オクトクリレン‥特にUVBを吸収する。安全性が高く、WHOが内分泌かく乱作用はないと結論付けています。

紫外線散乱剤の主な成分

酸化チタン‥UVAとUVBの両方に効果があるが、よりUVBを防御する。

酸化亜鉛‥UVAとUVBの両方に効果があるが、よりUVAを防御する。酸化チタンと比べると効果は劣るが、塗布後に白く残りにくい。

紫外線散乱剤は白く残りやすいですが、最近は粒子を細かくすることで、白く残りにくい商品も増えているようです。

添加物のパラベンについて

皆さんはパラベンフリーという言葉を聞いたことがありますか?

パラベンというのは防腐剤の1種で、様々な化粧品に添加物として使用されています。

一時期パラベンは体によくないということで、『パラベンフリー=安全』という誤った認識が浸透したことがあります。パラベンの毒性や発がん性、刺激性などについて多くの研究がなされていますが、積極的にパラベンフリーを推奨するようなデータはありません。

パラベンフリーの商品も、他の防腐剤を使用しています。仮に防腐剤を全て使用しなかったとしても、今度は商品が劣化しやすくなるため注意が必要になります。いずれにしても、パラベンを使用した場合と比べてどうなのかを考える必要がありそうですね。

パラベンの使用による皮膚トラブルの報告もあるので、もしも多くの化粧品の使用で皮膚トラブルがあるようでしたら、一度添加物もチェックしてみてくださいね!(これはパラベン以外の多くの添加物でも当てはまります。)

日焼け止めの選び方

使用する人に合わせた選び方

一般成人(中学生以上)‥成分はあまり気にせず、使用場面に合わせて、使用感の良いものを選択すると良いでしょう。商品の良し悪しに関しては、他のブログを参考にしていただければと思います。

子供(小学生以下)紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化亜鉛など)の使用が推奨されます。

敏感肌の方‥紫外線吸収剤は皮膚トラブルが起こりやすいので注意です。中でもオキシベンゾン-3には注意が必要です。主成分だけでなく、添加物の影響もあるので注意しましょう。

妊婦‥個人的には、内分泌かく乱作用の指摘がある、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルやオキシベンゾン-3の積極的な使用は避けた方が良いと考えます。2023年現在、ガイドラインなどでは特に注意喚起はされておりません。

使用する場面に合わせた選び方

環境省の「紫外線環境保健マニュアル2015」を参照すると、使用する状況に応じてSPFやPAの推奨値が変わってきます。

環境省:紫外線環境保健マニュアル2015 p41 より抜粋

散歩や買い物などの日常生活‥PAが+~++、SPFが~20程度で十分です。
屋外での軽いスポーツやレジャー‥PAが++~+++、SPFが20~30を目安にしましょう。
炎天下でのレジャーやマリンスポーツ‥PAが+++~、SPFが30~を選んでください。
非常に紫外線の強い場所‥PAが++++、SPFが50~の効果の強い商品を選びましょう。

日焼け対策とアフターケア

日焼け対策

環境省の「紫外線環境保健マニュアル2015」では、日焼け対策として以下の6つを推奨しております。

①紫外線の強い時間帯を避ける
②日陰を利用する
③日傘を使う、帽子をかぶる
④衣服で覆う
⑤サングラスをかける
⑥日焼け止めクリームを上手に使う

日焼け止めを使用する以外の対策もしっかり行っていく必要がありますね。

日焼けのアフターケア

もしも、家に帰ってから日焼けが気になるという場合は、アフターケアをしてみましょう。

シミやシワが気になる⇒一般的に、抗酸化作用のあるビタミンC、EやL-システイン、トラネキサム酸などが推奨されています。大変申し訳ないのですが、私の方で、どれくらいの量でどの程度効果があるかなどの、きちんとしたエビデンス(証拠)を探せなかったので、ご参考程度に。基本的には、塗るタイプ(外用薬)よりも飲む錠剤(内服薬)をお勧めします。

ほてり、赤みがある⇒まず冷水などでほてりを冷やしましょう。クールダウンをしっかりと行いつつ、肌の乾燥を防ぐためにしっかり保湿をしてください。乾燥は皮膚トラブルの大敵です!

痒みや痛みがでてしまった場合⇒クールダウン+保湿だけでは対応が難しいので、基本的には病院を受診しましょう。程度が弱いケースや、病院が休みで受診できない場合、一時的な使用目的としてOTC薬(市販薬)を使用するのも良いでしょう。
対応可能な商品として、ステロイドやNSAIDs(非ステロイド)、抗菌薬が配合されたものなど、いくつかあるのですが、可能であれば薬剤師に相談の上、購入されることをオススメします。

日焼け止めQ&A

虫よけとの併用について

虫よけと併用するときはどちらから使用したら良いですか?

必ず日焼け止めから先に使用するようにしましょう!
虫よけは、揮発することで効果が出ます。
ですので、虫よけを使用してから日焼け止めを塗ってしまうと、虫よけの成分が揮発しずらくなってしまい、効果が発揮できなくなってしまうのです。

ビタミンDとの兼ね合いについて
ママさん
ママさん

日光浴はビタミンDを生成するために大切だと聞いたけど、日焼け止めを使用しても大丈夫かしら?

体に欠かせないビタミンDは紫外線によって生み出されます。そのため、日焼け止めの使用を心配されるケースもありますが、基本的に日差しが強い状況下であれば、日焼け止めを使用することを推奨します!
近年、成人のカルシウム不足や乳幼児のビタミンD不足が指摘されています。そのため、常に日焼け止めを使用し続けるということは推奨されませんが、炎天下に何の対策もせずに外出するということも推奨されません。何事も中庸が大切ということですね。

ビタミンDを生成するためにどれくらいの日光に当たるべきかというのは、場所や日時、天気、スキンタイプなどの様々な要因でことなります。
1つの参考として、一般的な日本人の皮膚タイプで、東京都の昼頃、やや雲のある晴れの日、という条件では、8月の場合、両腕と顔の露出程度であれば3分間で十分だそうです。同様の条件で、1月の場合、顔と手の露出程度であれば10分間とのことでした。

アトピー患者さんについて

アトピーなのですが、日焼け止めを使うべきですか?避けるべきですか?

アトピーの症状によるので、まずは医師に確認することをオススメします。以下は、現在治療中ではない方で医師へ確認する機会がない方へ向けた情報です。

アトピー性皮膚炎は、光線過敏症ではないので、紫外線に対して過度に心配する必要はありません。
ただ、一部の研究では、5月~8月の10時~14時という紫外線が非常に強い時間帯において、サンスクリーン(いわゆる日焼け止め)を使用することで増悪予防効果があったとされているようです。
もしも日焼け止めを使用する場合は、PAやSPFがある程度高く、紫外線吸収剤が配合されていないノンケミカルタイプを使用しましょう。ただし、症状のある場所への使用は控えてください。
(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021を参考にしております)

主な参考資料
 ・今日のOTC薬
 ・紫外線環境保健マニュアル2015

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