咳が出るから受診したのに、咳止めをもらえなかった。これって間違いですか?
咳の治療で重要なことは原因の治療です。むやみに咳を止めようとすると、症状が悪化するリスクがあります。
【解説】
咳は、体の中に侵入した細菌やウィルスを外に排出するための生体防御反応の一つです。
感染を起こしている時の咳を止めてしまうと、原因となるウィルスや細菌が体内に留まってしまうため、治りが遅くなってしまう可能性があります。
また、喘息発作が起きているときは禁忌(絶対に使ってはいけない)となる咳止めもあります。
このように、咳に対して咳止めを処方しても全く効果が無いどころか、悪化させてしまうことがあるということは知っておいても良いでしょう。咳に対する治療は、直接咳を止めること(対処療法)よりも、原因を治療すること(原因療法)が重要です。
ほんの一例ですが、
痰が絡んでいることが原因であれば去痰剤などを、
咳喘息であれば気管支拡張剤などを、
慢性閉塞性肺疾患(COPD)であれば禁煙と吸入器などを、
アトピー咳嗽であればアレルギー薬などを、
逆流性食道炎が原因であれば胃酸の分泌を抑える薬などを、
処方したりします。
ここで伝えたいことは、病気名と治療薬の関係ではなくて、咳の原因は様々で、咳止めが処方されないケースも数多く存在する、ということです。
咳が出るのに、咳止めが処方されないと不安を感じることもあるかもしれません。その時は、このことを頭の片隅に入れていただいたうえで、かかりつけの医師や薬剤師に是非相談してみてください。
【市販薬の購入に関して】
咳が出ているときに、不用意に咳止めを購入することは避けましょう。呼吸苦を感じたり、黄色い痰が出ているようなときは要注意です。他にも注意点は様々です。咳の原因は様々なので、かかりつけの薬剤師などに症状を相談したうえで購入することをオススメします。また、漫然と市販薬を服用することは絶対に避けましょう。
最後に、私が遭遇する咳止めが処方される3つのケースの紹介+αをお話しするので、是非ご参考にしてみてください。
①咳による体力低下が懸念されるケース
咳というのは想像以上に体力を奪います。1回の咳で2kcal消費すると言われており、「コホッ、コホッ」とした咳が継続して、1時間に100回すれば200kcalが消費されます。これは、に相当する消費カロリーです。咳が続くということが、どれほど負担なのかが分かりますね。
また、咳が食事や睡眠の妨げになると、これも基礎体力の低下を招きます。このようなケースは咳止めが処方されることがあるでしょう。
②咳を直接止めても問題ないケース
咳の原因が不明瞭であったり、原因治療が不要な場合は咳止めが処方されるでしょう。風邪の後に咳が長引いてしまう感染後咳嗽などが該当します。当たり前のことですが、診断は医師が行うものですので、ご自身での判断で市販薬を服用し続けるということは避けましょう。
③患者さんの心理的な負担を軽減したいケース
病は気からと言いますが、咳が出るのに咳止めが処方されないことが、患者さんの不安感を強めるケースがあります。そのような場合は、医師がメリットとデメリットを天秤にかけて咳止めが処方されます。例えば、アスベリンという薬は咳を抑える作用の他に、痰を排出しやすくする作用があるので、痰の絡む咳でも使いやすかったりします。
子供の咳にハチミツが有効という論文があります。寝る前に10gほどのハチミツを摂取することで夜間の咳を改善させたとのこと。1歳未満のお子様にはハチミツは禁忌(ボツリヌス中毒の危険性があるため)であることや、虫歯のリスクなどがあることに注意が必要です。
詳細な理由は不明ですが、甘みを感じる神経が咳を抑える作用に関連しているようです。大人に対しても有効という情報もありますので、どうしても咳が辛いときに短期間試してみるのは有りかもしれませんね。
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