意外と知らない、うがい薬の注意点

風邪の予防で、手洗い・うがいをしていますが、うがい薬を使った方が効果的ですか?

薬剤師さん
薬剤師さん

症状のない状態で、予防のためのうがいであれば、水で十分です。
むしろ、イソジンなどの抗菌作用があるうがい薬の常用はやめましょう。

【解説】

皆さん、風邪の予防習慣と言ったら何が思い浮かびますか?
多くの人が、手洗い・うがい・マスク、と答えるのではないでしょうか?

とある研究を見てみると、うがいをすれば風邪の発症を36%減らせるという報告があるようです。この論文上でのうがいの方法は、水道水で、1回15秒以上を連続3回、これを1日3回以上行う、というものでした。うがいをする際、参考にしてみてください。(これが絶対正しい方法というわけではありません。)

うがいは日本人には馴染み深い習慣ですが、海外ではあまり行われていないようです。実際、手洗いやマスクの効果を研究している論文は多くありますが、うがいの効果となると少なくなるそうです。
口腔環境をキレイにしておくことや喉の粘膜を潤わせておくことは、感染予防や重症化予防にも重要と言われているので、今後の研究に期待したいですね。

通常のうがいで効果があるのであれば、うがい薬を使ったらもっと効果が出るのではないか?なんて思ったりしちゃいますよね。
確かに、うがい薬を適切なタイミングで使うことができれば、その効果をしっかり享受することができるのですが、うがい薬を毎日使うというのは、むしろ悪影響の方が大きいと言われます。

ということで、今回はうがい薬の中では最も有名であろう、イソジンうがい薬(ポビドンヨード製剤)を使用する際の注意点を3つお伝えします!

水で薄めるときは、必ず濃度を守る

イソジンは薄めて使用するタイプがほとんどです。その際、薄める濃度は15~30倍というのを守りましょう。

より強い効果を求めて濃くしすぎると、粘膜刺激のリスクが高まります
味が苦手だからと薄くしすぎると、殺菌・消毒作用は得られません

気持ちや味なども大事な要素だと思うので、適正な範囲内で濃度を調節してみてください。

ちなみに、薄めるのが面倒、間違えたくない、子供にすぐ使わせたい、という方のために、予め薄めてあるタイプも販売しております。

イソジンは常在菌も殺菌してしまう

当たり前の話ですが、イソジンには殺菌作用があるため、医薬品として認められています。

この殺菌作用は、風邪の原因となる細菌だけでなく、口の中の常在菌にも働いてしまいます。通常、人間の体は適切なバランスで菌が存在することで、健康状態を保っています。
予防のために長期間イソジンを使い続けることで、口の中の常在菌が減少してしまい、菌のバランスが崩れてウィルスや細菌に感染しやすくなってしまう菌交代現象)可能性があります。

60日間にわたる、うがいによる風邪の予防効果をみる試験では、イソジンを使ったうがいよりも、水道水でのうがいの方が予防効果が高かったというデータもあります。これはまさに、菌交代現象が起きてしまったためではないかと推測されています。

甲状腺機能影響を及ぼす可能性がある

イソジンの主成分であるポビドンヨードには、その名の通り、ヨード(ヨウ素)を含んでいます。

ヨウ素は甲状腺ホルモンをつくる材料となるのですが、過剰に摂取しつづけると、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症を引き起こすことがあります。

イソジンうがい液には、原液1ml中に7mgのヨウ素が含有されています。成人における、ヨウ素の1日の推奨量は0.13mg、上限量は3mgとされているので、含有量の多さにビックリしますね。
当然うがいなので、全てを摂取するわけではありませんが、イソジンを用法用量通りに使用した場合、1日に平均4mg程度吸収されたというデータがあります。(上限量を超えたからといって、すぐに甲状腺機能障害がおこるわけではありません。)

健常人に関しては、そう簡単に甲状腺機能障害を起こす可能性は非常に低いと考えられますが、すでに甲状腺疾患の診断を受けている方や、そのリスクを指摘されたことのある方はイソジンの長期使用は避けるべきでしょう。

また、妊娠中や授乳中において、母親や胎児、乳児は甲状腺機能障害を引き起こすリスクが高くなります。国立成育医療研究センターでは、妊婦や授乳婦が風邪の予防目的でイソジンを長期間使用することは避けるべきとの見解を示しています。

以上、イソジンうがい薬を使う上で注意して欲しい点を説明してまいりました。

これを読むと、イソジンが怖くなる方もいるかもしれません。
しかし、安心してください。短期間の使用であれば、イソジンを使用することのリスクは、ほとんどありません。医師からイソジンガーグルが処方された場合、過度に怖がって使用しないということは避けましょう。

薬剤師さん
薬剤師さん

いろんな情報を記載したので、最後に私の意見も含めてまとめておきます!

  • イソジンうがい薬は、風邪の予防には使用しない。
  • 喉が不調な時、感染リスクが高い状況下にいた時、などに短期間使用がオススメ。
  • 甲状腺疾患を治療中、妊娠中、授乳中は特に使用に注意する。
  • 医師からイソジンガーグルが処方された場合は指示通り使用する。

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