砕いてはいけない錠剤とは?

薬の飲み方

錠剤のお薬がたくさんあると、砕いて飲みたくなることってありますよね。
特に、介護の現場では、薬の数は増えるし、飲み込む力は弱くなるしで、錠剤を飲むのが大変ケースが見受けられます。

しかし、薬は種類によって砕いてはいけないものがあるので、必ず医師や薬剤師に確認してください。
特に薬剤師は、薬のスペシャリストですので、かかりつけの薬剤師がいれば、気になったときは是非お気軽に質問してみてください!

ということで、今回は、砕いてはいけない薬のタイプについて説明していたいと思います!

徐々に吸収される仕組みが施された薬

薬のなかには、徐放錠と呼ばれる、徐々に吸収されるように設計されたものがあります。

薬はその成分によって吸収スピードに差があります。飲んだらすぐに血液に吸収され、あっと言う間に血液から出ていってしまう薬もあれば、何時間もかけて吸収されて体から排出されるまでに数日かかるなんていう薬もあります。

薬の効果をなるべく長く保ちたいときに、薬の成分をそのままに、製剤を変えるということがあります。それがいわゆる徐放性製剤です。

薬の名前が、「○○徐放錠」と書いてあれば、間違いなく徐放性製剤です。また、「△△R錠」、「××CR錠」など、アルファベットが書いてあるものも該当する可能性があります。(OD錠やD錠は口の中で溶けるタイプを意味するので該当しません。)

このようなタイプの薬を割ったり砕いたりしてしまった場合、薬が急激に吸収されるために、本来の効果が得られないばかりか、副作用のリスクも高まります。このタイプの薬は、必ずそのまま服用してください。
また、どうしても飲めない場合は、必ず医師・薬剤師に相談してください。

参考までに、徐放性製剤の例をいくつか挙げておきます。

アダラートCR(ニフェジピン徐放錠)‥これは血圧の薬で、粉砕してしまうと急な降圧作用で転倒するリスクがあります。高血圧には非常によく使われる薬です。アダラートLも徐放製剤です。
ミラペックスLA(プラミペキソールLA)‥これはパーキンソンン病治療薬の一つです。服用が難しくなる難病ですが、この薬は粉砕はしてはいけません。プラミペキソールのLAがついていないタイプは徐放製剤ではありません。
フェロ・グラデュメット‥これは鉄剤の一つです。CRやLAなどのアルファベットがついていませんが、徐放性製剤です。名前で判断でいないタイプも多く存在します。

胃酸の影響を受けないように工夫された薬

一般的に、多くの薬は小腸から血液(体)に吸収されます。しかし、中には、胃酸で成分が壊れてしまったり、胃を刺激したりしてしまう薬があります。

そのような薬を安全にかつ効率よく腸まで届けるために開発されたのが、腸溶錠です。

このようなタイプの薬を割ったり砕いたりしてしまった場合、薬が吸収されなくなってしまったり、胃腸障害の副作用リスクが上がったりしてしまいます。このタイプの薬も必ずそのままで服用してください。

参考までに、腸溶錠の具体例をいくつか挙げておきます。

パリエット(ラベプラゾール)‥胃酸の分泌を抑える薬です。砕くと効果がなくなります。
バイアスピリン‥血液をサラサラにする薬です。砕くと胃腸障害のリスクが高くなります。

催奇形性や細胞毒性がある薬

分かりやすいところで、抗がん剤などが該当します。

薬を砕いたとき、調剤している薬剤師や服薬介助をする介護者、薬剤が付着した袋を捨てる人など、多くの人が薬剤に曝露することになります。曝露量は少ないため、心配いらないケースが多いのですが、抗がん剤などの細胞毒性が高い薬に関しては、そうはいきません。

一般的に薬は飲むことが多いので、マスクさえしておけば大丈夫と思われがちですが、非常に小さな粒子となるため、通常のマスクですべてを防ぐことが難しいでしょう。また、皮膚や目、粘膜などからも吸収されることもあります。

病院や調剤薬局では、抗がん剤の取り扱いマニュアル等により、被爆対策が行われています。自分だけではなく、服用患者さんの周囲に悪影響を及ぼさないようにするために、これらの薬も必ずそのまま服用しましょう。

参考までに、注意が必要な例をいくつか挙げておきます。

抗がん剤全般‥被爆のリスクが非常に高いので、絶対に粉砕しないでください。薬が上手に飲めないときは必ず医師・薬剤師相談してください。
プロペシア‥薄毛の進行を抑える働きがあるAGA治療薬です。男性ホルモンに作用するため、妊婦や授乳婦、小さいお子さんに対して悪影響を及ぼします。皮膚からも吸収されるので要注意です。

苦みや刺激感をコーティングしている薬

良薬口に苦しという言葉があるように、薬の多くは苦いものです。多少は我慢できるかと思いますが、本当に苦い薬を毎日飲むというのは苦痛でしょう。私もセンブリを毎日飲めと言われたら涙がでてきます。

苦みを抑えるために、特殊なコーティングをすることもあります。糖衣錠はその一種で、舐めると甘いです。(甘い部分がなくなった途端、薬の苦みがやってくるので注意が必要です。)
このタイプの薬は、苦み(リスク)と錠剤を砕くことによる飲みやすさ(ベネフィット)を比べたうえで、粉砕をするかどうか判断する必要がありますね。

苦味という味の問題だけでなく、中には粘膜刺激を防ぐためのコーティングがされていることがあります。このタイプは、粉砕によって粘膜が刺激されてしまうので、基本的に避けるべきでしょう。

参考までに、該当する薬をいくつか挙げておきます。

リカルボン・ボノテオ(リカルボン)‥朝起きてすぐに飲む骨粗しょう症の薬。粘膜の刺激で副作用を起こすリスクがあるので、粉砕は避けましょう。
サンリズム(ピルシカイニド)‥不整脈に使うカプセル。カプセルの中には刺激の強い粉が入っているので注意しましょう。
ルネスタ(エスゾピクロン)‥睡眠薬です。錠剤のまま服用しても苦みの副作用が出ることがあります。粉砕すると、粉が舞うだけでかなり苦いです。

有効成分を湿気や光から守るために工夫された薬

薬の中には、湿気や光に弱いものがあります。有効成分が湿気や光によって化学反応を起こしてしまうと、本来の効果が得られなくなってしまいます。

錠剤によっては、湿気を吸収してベチャベチャになってしまうものもあります。

このタイプの薬は、薬局で粉砕してお渡しすることができませんが、薬種類によっては飲む直前に砕くというのは可能かもしれません。是非かかりつけの薬剤師さんに相談してみてください。

参考までに、該当する薬をいくつか挙げておきます。

アスパラカリウム‥血液中にカリウムが少なくなった時に補充するための薬です。砕くとベチャベチャになります。
ベルソムラ‥睡眠薬の一つ。光や湿気の影響を受けやすいため、仰々しいシートに入っています。
デパケン(バルプロ酸)‥てんかん治療薬。片頭痛の予防など幅広い用途があります。砕かなくても、錠剤をPTPシートから出して放置し置くだけでベチャベチャになります。ちなみに、デパケンRという製品は湿気に強いんです!

薬剤師さん
薬剤師さん

薬を砕いたとき、どんな不利益があるか、なんとなく想像できましたか?
錠剤がどうしても飲めないときは、必ずかかりつけ薬剤師に相談してくださいね。

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