風邪を引いたのに抗生物質(抗菌薬)を出してもらえませんでした。抗生物質を飲んだ方が速く治るんじゃないの?
風邪の多くはウィルス感染であり、抗生物質は不要なケースが多いです。
【解説】
皆さん、風邪(風邪症候群)の原因ってなんだかわかりますか?
実は、そのほとんど(80~90%と言われています)がウィルスなんです。そして、ウィルスには抗生物質は無効なんです。
以前は、風邪をひいたときに、「多分ウィルス感染だけど、もしも細菌だとよくないから、念のために抗生物質を出しておこう」とか、「本当は不要だと思うけど、患者さんが希望するからだしておこう」といった理由で抗菌薬が処方されるケースも多々見受けられました。
この「念のため」や「患者さんが希望する」ことによる抗菌薬の処方は、患者さんからは「抗生物質を出してもらえて安心」というメリットがある一方、薬剤耐性菌の増加という国際社会でも大きな問題となっているデメリットがあります。
薬剤耐性菌とは、今まで効果のあった抗生物質に対して抵抗性を持った細菌のことです。この耐性菌が増えると、既存の抗生物質では細菌感染の治療ができなくなってしまうことになります。
対策が講じられないままであれば、2050年には薬剤耐性菌が引き起こす感染症によって、世界で年間1,000万人の患者がなくなると予測されています。
2016年に、『薬剤耐性対策アクションプラン』というものがつくられ、医療機関でも可能な限り抗生物質は使わないようになっております。
ですので、「風邪症状に対して安易に抗生物質をださない」というのは一般的な治療方針となっております。患者さんとして受診されたときには、どうかこのことを頭の片隅に入れておいてください。
それでも念のために抗生物質を処方して欲しいという方のために、不用意に抗生物質が処方された場合のデメリットをまとめておきます。
- 下痢や薬剤アレルギーなどの副作用リスクにさらされる。
- 腸内細菌や皮膚などの常在菌のバランスを損なう可能性がある。
- 風邪をひいたら抗生物質という心理的依存をもたらす。
- 薬剤耐性菌を生み出してしまう。
デメリットを強調すると、今度は使用が不安になる方もいるかもしれませんが、細菌による膀胱炎や肺炎、副鼻腔炎などに対しては、抗生物質の投与が非常に有効な手段となります。
抗生物質が処方された際は、しっかり服用するようにしましょう!
最後に、薬剤耐性菌を防ぐための重要なアクションを紹介しておきます。
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